1247年11月 於・ユノー海岸


フィニー王ギュスターヴ12世の没後、王位はギュスターヴ14世が継いだ。
ギュスターヴ達兄弟―――ギュスターヴ13世、フィリップ、マリーの腹違いの弟にあたる。
ギュスターヴ13世は父ギュスターヴ12世の残した遺産、つまりフィニー王国の相続権を主張し、兵を挙げた。

東大陸、ロードレスランド―――ユノー海岸にて
ケルヴィン「どうだギュスターヴ、20年ぶりに東大陸に戻ってきた気分は?
ギュスターヴ「別に。
ケルヴィン「感動のない奴だな。
ギュスターヴ「うわーいうわーい東大陸だーうれしいなー。
ケルヴィン「…。
 シルマール先生に連れられて、ソフィー様と逃げ出して来たのに、戻ってくる時はこうだぞ。

ケルヴィン「こうして一軍を率いて戻って来ると想像していたか?何か感じるものがあるだろう?
ギュスターヴ「母上が生きていたら、何とおっしゃるだろう。
ケルヴィン「石ころ以下でも出来損ないでも、あなたは人間なの。人間なのよ、ギュスターヴ!
ギュスターヴ「……………。
ケルヴィン「……………。
ギュスターヴ「やっぱりそうか、そうだよな。はっはっは…どうせ俺なんかよぅ…。どーせどーせ…。
ケルヴィン「な…なんだ、本気で聞いていたのか?それならそうとはっきりと言ってくれ…。
 お前の真剣な時と不真面目な時の境界線がいまいちわからんのだ…。
ギュスターヴ「そんじゃあ真面目に聞くが…。
 ケルヴィンが大好きなバツイチの俺の母上が生きてたら、石ころ以下とかなんだとか言わずに、何とおっしゃるだろう。
ケルヴィン「…それは本当に真面目に聞いているようには思えないんだが、
 ソフィー様が生きていたら、か。もちろん喜んで下さるさ。
ギュスターヴ「俺は今から、方違えとはいえ弟と戦わなければならない。
 こんな血生臭い事を、母上は望みはしないだろう。
ケルヴィン「そんな弱気、らしくないぞ。
ギュスターヴ「これから、多くのアニマが消えていく。
 自分のため、家族のため、世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため、世のため、人のため、俺のため、愛のために必死で戦う。
 この時ばかりはと皆がこぞって愛の戦士となり、戦場で気高く咲いて美しく散る。
 俺を王位に就ければ、この前ケルヴィンがなくしちゃった若さを取り戻せると信じて戦うんだ。
 だが俺は若さが欲しいわけじゃない。自分に出来ることを確かめたいだけなんだ。
 確かめ算とか言ってプラスのマークをカメの甲羅に書き込むような変なマークを使って、割り算したら商と割った数をかけて、余りを足す。
 そんな足しカメとか言って自分勝手な変なマークを作って学生に広めて、自分ってセンスいーじゃん、って浸るんだ。
 アニマの無い男が考えそうな事だろう?
ケルヴィン「いいか、ギュスターヴ。
 お前が何を考えていても構わんが、兵たちの前ではそんな事、絶対に口にするなよ。
 …わざわざ頭をこんがらがせないで欲しいし、って言うかアニマ以前の問題だ。

ネーベルスタン「こちらでしたか。
ギュスターヴ「マイムマイムは順調に進んでいるかな、将軍?
ネーベルスタン「そんな事、計画外です。
ギュスターヴ「じゃあ上陸は順調に進んでいるかな、ネータン?
ネーベルスタン「はい、問題ありません。
 上陸も成功しましたし、各地に死者を送りたいと思います。
 そして、ギュスターヴ12世とソフィー王妃の間に生まれた正当な後継者が帰還した事を知らせたいと思います。
ギュスターヴ「私は正当な後継者なんかじゃないよ、将軍。
 ただの…そう、季節が過ぎまくった夏物衣料の如しの出来損ないだ。
ネーベルスタン「ギュスターヴ様、この戦いの目玉を明らかにしておく必要があるのです。
 我々を南大陸からの侵略者だと考えれば東大陸の人々は必死で抵抗します。
 しかし、戦いがフィニー王家の身内の争いならば、どちらが勝っても同じ。
 強いて言えば、13か14かという数字の違い。彼らは勝った方に従うだけです。
 ですから軍事的に見ても、この争いをギュスターヴとギュスターヴの戦いにしなければならないのです。
ギュスターヴ「はい、はい。
ネーベルスタン「違う!もっと真剣に!!
ギュスターヴ「ひッ!わ、わかったよ、将軍。
 その辺は任すから、ケルヴィンとお見合いして決めてたもれ。ほんだらなー。

ケルヴィン「将軍、どう思います?ムートンが笑顔を絶やさないのは策のうちか、もともとああいう顔なのか。
ネーベルスタン「それは…もともとあんな顔なのかもしれません。しかし、前者であると信じています。
ケルヴィン「じゃあ、ギュスターヴとレスリーの関係は。
ネーベルスタン「それはケルヴィン殿の方が詳しいでしょう。
ケルヴィン「まったくだ。では…ギュスターヴは冷静で鋭い奴なのに、自分の事になると急に判断力が無くなって、投げやりになる。
ネーベルスタン「ケルヴィン殿は自分の血を誇りに思っていますか?
ケルヴィン「………………。
 もちろんだ。ヤーデ伯の家に生まれた事を誇りに思うし、そのための義務も喜んで果たすよ。
ネーベルスタン「(なんだ、今の間は?)
 ギュスターヴ様は御自分の血を呪っています。
 しかし呪うと言うのもなんだかアニマが関わってくる感じなので、その表現も嫌がります。
 自分だけでなく周りの人々をも巻き込んで不幸にしていく、その事に脅えています。
 術が使えない自分は見下されていると感じています。しかし下には下がいると信じているところもあります。
 しかしそんな奴はどこにもいない、と憤りを感じています。
 一方で自分の力を精一杯試してみたいという前向きな精神の持ち主でもありますし、
 道草大好きな横向きなところもたくさんあります。
 しかしなんだかんだ言ったって、自分に自信も持っています。
ケルヴィン「よくそんなに喋れるなー。さすがだ。
ネーベルスタン「シルマール先生の押し売りです。
 私はギュスターヴ様の暗い影と怠け癖とポーレン相手に思いっきり暴れたい欲求が大きくならないようにしなければと考えています。
 それにはケルヴィン殿、あなたの存在は重要なのですよ。
ケルヴィン「うむ…大変だ。
 とにかく今はこの戦いを勝ち抜かなければ。ギュスターヴはもちろん、我々の未来のためにも。


おわり。


「上陸」、なかなかに影が薄いイベントだと思います(またかい)。
しかしセリフを読み返していくと、色々とギュスターヴに関する重要なことが固まっているような気がしますし、
そしてケルヴィンとネーベルスタン将軍のツーショット…なんとなくこの組み合わせといいと思います。
なんと言うか今回は微妙なボケとギュスターヴの謎台詞で乗り切った感じです。
次は兄弟再会あたりでしょうかね、コンバットバトルは描写が難しそうですし(爆)。

ちなみにギュスターヴのまくし立てる台詞の中の、
「世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため」はロケット団、「愛の戦士」はキューティーハニー、
「気高く咲いて美しく散る」はベルばらです。足しカメ算は…やったことある人が多いと思います(笑)

書いた奴:サガフロ2なんて何年も触れてない清風