1248年6月 於・テルム


時は1248年。
バケットヒルの戦いで腹違いの弟を破ったギュスターヴ13世は、新たなるフィニー王国の統治者として入城した。
そこで、ついにギュスターヴ13世ら兄弟は、20年ぶりの再会を果たすこととなる。

ネーベルスタン「今年の税は全て取り終わっているのだな?
官僚「一部を除いてすべて城内に忍び込んでおります。
ネーベルスタン「その言い間違いは少し苦しいな。運び込んであるのだな。
ケルヴィン「おや、オート候の分が未納になっているな。
官僚「はい。オート侯は今年は色々と理由をつけて納税を引き延ばしておりましたので。
ギュスターヴ「情勢の変化を予想して備えていたんだろう。ふ、ふ、ふ、カンタールめ、奴は悪よのぅ。
官僚「いやいや、ギュスターヴ様こそ。ぐっふっふっふっふ。
ネーベルスタン「油断できませんな。
兵士「申し上げます。オート侯妃が宴会を願い出ております。
ギュスターヴ「よっしゃ。祭りだ祭りだ。
ケルヴィン「真面目に仕事している時に変な事を言うな。
兵士「あ、えー、オート候妃が面会を願い出ております。
ギュスターヴ「マリーが?ここで通せんぼ。
ケルヴィン「こらこらこらこら。
ギュスターヴ「おう。ここへ通せ。
ネーベルスタン「我々も下がります。
ギュスターヴ「いや、いてくれ。取り次ぎにもオート候妃と名乗ったのだろう。
 これはシークレットゲストみたいな扱いで、実は俺の妹のマリーでしたーじゃじゃーん。
 とかいう感じだと思った方がいい。

マリー「オート候の妻、マリーでございます。冷やし中華始めました、お兄様。
ギュスターヴ「冷やし中華か、やっぱりゴマだれでカラシをにゅるにゅる、だよな。
マリー「ええ、でも、私は辛いものは苦手なのです。冷やし中華の復活は20年ぶりですよ、お兄様。
ギュスターヴ「グルメの話もあるだろうが、今日のご飯は何かね、オート候妃?
 …………
 ケルヴィン、将軍、そんな目で見るな。俺だって辛いんだ。
 で、だ、今日は何か重要な用件があるのではないかね、オート候妃?
マリー「はい、お察しの通りでございます。
 わが夫、カンタールは、ギュスターヴ様に袖の下を送る機会を頂きたいと申しております。
 差し出がましいとお思いでしょうが、私からも何とぞよしなに、お兄様。
ギュスターヴ「袖の下も何も、とりあえず税を納めていないじゃないか。とりあえず義務は守ってくれい。
 と、あと、袖の下も何も、妹の夫、私の舎弟、立派なギュスターヴファミリーの一員ではないか。
 安心して坊やはよい子だ寝んねしな。そう伝えてくれ。
マリー「それを聞いて安心しました。睡眠時間が確保できます。
 お兄様、お話したいことがたくさん、本当にたくさんあるのですけれど、今日は、これで失礼いたします。
 早くカンタールに、この事を知らせたいのです。

ネーベルスタン「簡単に折れてきましたな、意外です。
ギュスターヴ「私とフィリップが手を握るのを恐れたのだろう。一応、実は兄弟だからな。
 どうしたケルヴィン?
ケルヴィン「お前の何処から突っ込めばいいのかわからなくなってきた、じゃなくて、
 ソフィー様の面影があった…。
ギュスターヴ「そうだな。
 お前もナ国のスイ王も大好きな、バツイチの母上によく似ている。
ケルヴィン「またバツイチ好きとかでたらめを…。
 って、そういう問題じゃなくてだ、こんな時に何を言っているんだ私は。
 オート候が軍門に下ったということは、残るはノール候だけだな。
ギュスターヴ「フィリップは来ないだろう。あいつは俺の事を愛しているが故に!!
ネーベルスタン「オート候が我々に付いたとなれば、ノールは孤立します。
 ギュスターヴ様の個人的な恋愛感情は別にして、ノール候の立場なら来ないわけにはいきません。
 そうしなけばノールの貴族や領民を守れませんから。
ケルヴィン「いざとなったら、マリー様にも一肌脱いでもらわねばなるまいな。
 変な意味じゃないぞ。誤解するな。
ギュスターヴ「前髪が変なのはお前だ、ケルヴィン。
ケルヴィン「…前髪?



ギュスターヴ「ここがフィリップの部屋だ。ノール候を継いでからも、この部屋を使っていたらしい。
レスリー「明るい部屋ね。
 この絵!なんてひどいことを…。
ギュスターヴ「―――あいつは寂しがりやで、いつも俺の後を転がってきた。にいさま、にいさまってね。
 泣き虫だった。俺が殴ったらべそかいてた。
 母親がいなくなった理由も分からなかったろう。
 母親がいない寂しさ、恋しさ、塩っ辛さ、ほろ苦さ、5歳のあいつはどうやって耐えたんだろう。
 あれから20年、そんなものを俺への愛と憎しみと汗と涙に変えることであいつは乗り越えてきたんだ―――。

 フィリップもマリーも俺のせいで若さを失った。
 俺が、俺なんかが生まれて
レスリー「それを言っちゃダメよ、ギュス、禁句だから、もう分かってるから。言わないで。
 ソフィー様が悲しむわ。私も…
ギュスターヴ「レスリー、ズケズケ言ってくれながらも、なぜ君が泣く?
レスリー「だって…ソフィー様があなたを産んで、色んな事があって、だから私は今ここにいるの。
 あの時、本当はとっても恐くて逃げ出したくて、でもそれが嫌で、元気に勇気と根気を出したのよ。
 だから、私、今ここにいるの。
 あの頃のあなた、本当に恐かったんだから。
 あなたったら、何言わせるのよ。
ギュスターヴ「何も言わせた覚えはないが、ありがとう、レスリー。
 君はいつも、俺を救ってくれるよ。
レスリー「私は全然救われないわよ、あなたといても。
 いつも引っこ抜かれて振り回されて食べられて、どんどん深みに引きずりこまれて最後には食べられる感じ。
 少なくとも退屈はしないで済むけれど。




ギュスターヴ「わざわざ来てもらってすまん、マリー。
マリー「いいえ、兄様、20年ぶりでだんご三兄弟ですもの。私、胸が小躍りしてしまいますわ。
 ギュスターヴ兄様、フィリップお兄様とケンカをしないで下さいね。
ギュスターヴ「もちろんだ。
 胸が小躍りって言っても変な意味じゃないぞ、ケルヴィン、今日は外してもらいたいんだが。
ケルヴィン「どさくさに紛れて何を言うか。
 とにかく駄目だ。本当は私と将軍だけでは少々警護が不安なのだ。
ギュスターヴ「寝グセすごいな。
ケルヴィン「誰の所為だと思っているんだ!
兵士「ノール牛フィリップ様、ご到着!!
ギュスターヴ「今日はステーキ…か?
マリー「お兄様、もっとこちらへいらして。
フィリップ「今日は貴様を殺しに来た。
ケルヴィン「やっぱりか!
ギュスターヴ「ケルヴィ〜ン!!
 フィリップ、お前は俺と違って、フィニー訛りも朝飯前らしいな。
 ならば、そこからでも届くな、俺への燃えたぎる愛情が!!
マリー「やめて!お兄様!!
フィリップ「此処で会ったが百年目、貴様を憎んで憎んで20年間(年があわない)、
 この手で貴様の息の根を止めることを思いつづけ、
 やっと今日、この瞬間かと思うと笑いが止まらない。ふ、ふふふ、はっはっはっはっはっは。
ギュスターヴ「むむ、負けるものか。うははははははははは。
フィリップ「だのに、何故だ、なぜ貴様から母様のアニマを感じるのだ!
 なぜ、こんなに懐かしいんだ…!
ギュスターヴ「フィリップ、マリー、お母様のアニマが旅立つ前に二人に言づてを頼まれた。
 竹やぶに竹立てかけたかったから竹立てかけた……ん、これじゃないな。
 そうだ、本当に…本当に見たんだってば、幽霊を!!……いや、これも違う。
 本当に
ソフィー「本当にごめんなさい、フィリップ、マリー
フィリップ「母様!
マリー「お母様!
フィリップ「かあさまーーー

ケルヴィン「(あぁ、やはりマリー様はソフィー様によく似ている…いいなぁ)」
ネーベルスタン「(そういえばムートンがまた何かしてたような。まずい、見に行かなければ)




フィリップ「貴様を愛したわけではないぞ。ノールの人々のためだ。
ギュスターヴ「ちえっ、ケチだな。フィリップ、俺はこの国の王になる気はない。
 お前も知っても通り、俺は大世界と金銀財宝と美人のねーちゃんに呼ばれているからな。
 お前はどうなんだ?
フィリップ「母上がグリューゲルへ貴様によって連れ去られた後、
 父上は、私とマリーを自分の子供として扱うのを止めた。すぐに別の男の子が産まれたからな。
 だが、この国は私が継ぐぞ。私の血は貴様と違って正当な後継者の血だ。
ギュスターヴ「むがー。血筋は同じだろうが。
マリー「では私も夫とともに狙いに行きます。また会える日を楽しみにしております。
ギュスターヴ「うん。今度は袖の下を持ったカンタールも連れてくるといい。
マリー「ええ、今度は二人で参ります。

フリン「ギュス様〜。かえる取って来たよ。みんなの分も。
 って、あれ、マリー様、もう帰っちゃったんだ。話がしたかったのにな〜。
 ギュス様、いい事あったの?そういう顔してる。
ギュスターヴ「ああ。なぜか心が晴れ晴れとしているんだ。
 こんなのは久し振りだ、将軍とワイド候が俺様の策にはまったとき以来だ。
フリン「そういうの、続くといいよね、ギュス様。
 ず〜っと続くといいよね。



おわり。


いい加減に小説を更新していません。いい加減じゃないよ、真剣にギャグなんだよ!!
定期考査が終わったらギャグ。これに限ります、ハイテンションだから。
今回はネーベルスタンがギュスターヴのボケをスルーしまくっています。
ケルヴィンはついに色々とネタにされました。特に前髪。ごめんケルヴィン、好きだよ(いらねぇよ)?
マリーやらフィリップやらは書きやすかったなぁ。ギュスターヴのペースもなんか妙に保てましたし。

やべっ、そろそろネタが尽きそうだぜ!

書いた奴:今回のコンセプトは「愛」連打で。の清風