1264年 於・ハン・ノヴァ


1264年のあるとき。
ネーベルスタン将軍も、もう年だ。
自分のアニマの事は、自分が最も解る。
そう、将軍は語った。

ハン・ノヴァ宮殿のバルコニーにて―――
ネーベルスタン「ギュスターヴ様。
ギュスターヴ「ネーベルスカタンか。
ネーベルスタン「……(無言の抗議)
ギュスターヴ「(知らん振り)近いうちに見舞いに行こうとケルヴィンと話したんだが、結論が出なかったんだが。
 ………って、なぜこんな所に!これがウワサの幽霊か?
ネーベルスタン「勝手に殺さないで下さい。…ギュスターヴ様、今日はお別れに参りました。
ギュスターヴ「馬鹿な、
ネーベルスタン「自分のアニマの事です。自分が一番良く分かります。やせ細り、ベッドに横たわった姿でお目に掛かりたくはありません。
ギュスターヴ「(将軍はあと一年は持つって、ケルヴィンと賭けてたのに!)
ネーベルスタン「(…なんだろう、この目線は)自分の力で歩けるうちにと、本日やってまいりました。
ギュスターヴ「(まぁ、歩けるんだったら、まだ望みはあるかな。セーフセーフ)
ネーベルスタン「ギュスターヴ様に出会った頃の事を良く思い出します。
 ずいぶん無茶な奴が現れたと思っておりました。
ギュスターヴ「沈着冷静な将軍からすれば、私などは小僧だったろうな〜
ネーベルスタン「まったくです。
ギュスターヴ「あァん?何か言ったか?
ネーベルスタン「いえ、別に。
 …私はギュスターヴ様と自分の若い頃を重ね合わせて見ていたのです。
 私も、引退した父に代わってワイド侯に仕えるまでは、自分の腕を頼りに、あちこち放浪しながら生きていました。
ギュスターヴ「なるほど、いわゆるホームレスな。
ネーベルスタン「武者修行と言って下さい。
ギュスターヴ「へいへい。武者修行な。
ネーベルスタン「そして、誰もが経験することですが、自分の力を過信するようになりました。
 それで、グリューゲルとフォーゲラングの間を一人で往復するという無謀な計画を思いついたのです。
ギュスターヴ「……友達、いなかったのな?
ネーベルスタン「だから武者修行と言ってるでしょうが。

こうしてネーベルスタン将軍は、その道中のことを主に聞かせたと言う。


ネーベルスタン「往路の方は、特に予想外のアクシデントなどもなく無事に切り抜けられたのです。
 これなら帰りも大丈夫だろうと思っていたのですが……甘かった。
 フォーゲラングは南大陸の奥地に位置し、人口も少ない。とは言えど、だいぶ栄えていた様子でした。
 そこの、とあるツール屋に立ち寄ったときのことです―――。


―1228年・フォーゲラングのツール屋にて…将軍の回想―
術士「おや、回覧板ですね。ご苦労様です。
ネーベルスタン「…何をいきなり。
術士「…旅人でしたか。岩荒野を抜けてきたのですね。ご苦労様です。
ネーベルスタン「一人でここまで来るのは大変だったよ。
術士「一人で!孤独ですねぇ、かわいそうに。
ネーベルスタン「いや、そういうわけではなく…武者修行を。
術士「なに、故意に一人で?無茶な事をする人だ。
 親からもらった大事なアニマですよ、粗末にしてはいけません。
 必要なときに必要な分だけ。それで十分でしょうに。
ネーベルスタン「自分のアニマだ、好きにさせてくれ。
 それに、まだ半分なんだ。これからグリューゲルまで帰らないと。
術士「一人で帰るつもりですか?私で良ければ同行しましょう。
ネーベルスタン「…よろしくお願いします。
術士「おや、あっさりと受けましたね。
 …やっぱり寂しかったんですね?
ネーベルスタン「だから、違うと言っているでしょう…。

ネーベルスタン「どういうわけだか、その時のシルマール先生からは、断り難いオーラが出ていました。
 …こうして、この計画は半分で終わったわけです。
ギュスターヴ「いや、そこで切るな。続きも聞かせろ。

術士「私はシルマールと言います。
 酒場に一緒に旅してきた連れがいます。彼を………うーん
ネーベルスタン「連れて行かないと一人になるのでは?
 …いや、その前になぜそこで迷うんですか。
シルマール「いえ、ちょっとした茶目っ気というものです。
 彼も誘いましょう。

シルマール「ナルセス君、そろそろグリューゲルへ戻ろうか。
ナルセス「シルマール先生、道を知らなかったなら最初からそう言って下さいよ。
 まったく、死ぬ思いだった。
シルマール「岩荒野には道なんて無いと思うと言ったはずだよ。
 それに、道から外れるのもまた一興、でしょう。
ナルセス「道から外れる事も…か。この外道が。
シルマール「ん、何か言ったかな?
ナルセス「いや、特に何も。
 こんな何も無い所なら、最初からそう言って下さい、と思いまして。
シルマール「クヴェルは無いと思うと言ったはずだよ。
 それに、クヴェルがあったところで高くて手が出せないでしょう。
ナルセス「まあ、いいでしょう。変わったツールは手に入りましたから。
 ところで、こいつはなんですか。
ネーベルスタン「こいつとは何だ!
 私はネーベルスタン、一人でグリューゲルから旅をしてきた。
ナルセス「一人で!
 よっぽど嫌われているんだな、哀れな奴だ。
ネーベルスタン「どうして揃いも揃って、孤独だとか嫌われ者だとか……。
 別にそういう理由ではなく、武者修行だと言っているのに…!
ナルセス「なに、武者修行で岩荒野を?
 無謀な行動が勇気の証明だと思っているのか、ガキめ。
ネーベルスタン「貴様の勇気を証明してもらおうではないか。
 表へ出ろ。
シルマール「やめなさい!仕方が無い人達だ、石の拳!!(ずごーん、どかーん)
 馬鹿な事をすると、私が許しませんよ。
 さあ、二人とも出発です。
ナルセス「はい。(先生の拳が頭に響く…)
ネーベルスタン「気に食わんやつだ。(というかアニマを粗末にするなと言ったのは何処の誰だ)
シルマール「時には、そういった人物とも協力する必要があるものですよ。
 それが出来なければ、死ぬだけです。

ネーベルスタン「その時の『石の拳』のおかげか、どうにもそれ以降の敵からの攻撃が効くような気がしまして…。
ギュスターヴ「…恐ろしい。
―――ネーベルスタン将軍の回想は、そんな奇妙なエピソードで締めくくられたと言う。


ギュスターヴ「将軍とシルマール先生にそんな事があったのか。
 こんなに長話をして大丈夫なのか?
ネーベルスタン「ええ。むしろ若返った気分です。
 では、これで失礼します。お見送りは、ここで結構です。
ギュスターヴ「将軍!さ…
フリン「ギュス様〜。あけび取って来たよ。誰にも見付からなかったよ。
ギュスターヴ「…………。
 いいシーンをぶち壊すなあぁぁぁぁ!!
フリン「うわ〜!ギュス様どうしたの〜!?
ギュスターヴ「…ったく。すまないな将軍、もう一度さっきのセリフから!
ネーベルスタン「は?…………。
 では、これで失礼します。お見送りは、ここで結構です。
ギュスターヴ「将軍!………ありがとう。


おわり。


このイベント、大好きなんです。
…んっ?別に若かりし頃のナルセスさんに会えるからとかじゃなくってだな…。
シルマール先生をバトルに出せる貴重な機会、なおかつナルセスさん付きだ。そんな認識。
ネーベルスタンだって好きなんですけどさ。初めて見たとき、女だと思ってしまいまして…。
だ、だって!ドット絵のあの長髪、しっとりじゃないですか(爆)!!
そして最後のギュスターヴとネーベルスタンの会話シーンにかかる曲も好きなんです。
二人の会話も大好きなんですが、曲の短い短い前奏が何かこう、いいんですよねぇ。
野暮な事ですが
そんな武者修行時代から「騎士の盾」だなんて豪華だよネーベルさん。
なおかつネーベルスタンって、ネーベルと呼ぶかスタンと呼ぶか判断に迷いません?…んなことないか。

書いた奴:石の拳のもう一方の術技って思い出しにくい気がする清風