1305年初夏 於・ハン・ノヴァ郊外


 ヤーデ伯チャールズに勝利したギュスターヴ軍の下へ、近隣から続々と兵が集まって来た。
一方、和平条約を仮調印した諸侯は、新ヤーデ伯デーヴィドを中心に連合軍を結成。
北・南・西の三方からハン・ノヴァへ向かった。
ギュスターヴ軍は主力で西方軍と対峙し、ボルス率いる部隊で比較的弱い北方軍を迎撃。 ボルス隊は北方軍を見事に撃破した。
ここまではギュスターヴの戦略どおりであった。
 しかし、ボルス隊は禁止されていた追撃を敢行、ハン・ノヴァへの帰還が遅れる。
ギュスターヴはボルス隊帰還後、全兵力で連合軍の要、デーヴィド軍に当たるつもりであった。
しかし、ボルス隊は追撃から戻らず、先に南方軍がハン・ノヴァに迫った。
ここに到り、ギュスターヴ軍は現兵力での戦闘を決意する。
1305年初夏、史上名高いサウスマウンドトップの戦いが開始されようとしている、そんな時―――。


ロベルト「にらみ合って2日たったな。どちらも何を待ってるんだ。
プルミエール「お取り寄せグルメよ。ヤーデ伯はラウプホルツ直送のメープルシロップを待っている、
 偽者は3日前に発注したメルシュマン風海産物詰め合わせが来るのを待っている。
ロベルト「それじゃあ、今日も空腹状態か?
プルミエール「いいえ、偽者が仕掛けるわ。
 明日になればラウプホルツ公が到着する。そうなればやる気が減るから。
ロベルト「やけに詳しいな、プルミエール。…お、本当だ、偽者の軍が動き出したぞ。遂に決戦か。
 しかし、ヤーデ伯は偽者に勝てるのか?
プルミエール「勝ってもらわなきゃ困るでしょう。
ウィル「食い気はヤーデ伯の方が劣っている。今日一日持ちこたえてくれれば。


ロベルト「何とか持ちこたえているな。
…おい、グスタフ、どこへ行く?
グスタフ「デーヴィドに差し入れを持って行く。
ロベルト「あそこじゃ料理対決をやっているんだ。お前一人が行って何になる。
 どういうつもりだ?
グスタフ「私は一度、父の遺言に背いた。そして、髪を巻いた。
 だが、今度は背かない。デーヴィドを守る。
ヴァン「待ちたまえ。鋼鉄の胃袋兵との料理ショーだ。
 君のファイアブランドよりこの剣のほうがいい。
グスタフ「何故、ファイアブランドの事をご存知なのですか。
ヴァン「私はギュスターヴ公に振り回されてハン・ノヴァグルメツアーに参加した身。
 君の祖父ケルヴィン公のへそくりの隠し場所、父フィリップ殿のほくろの数も良く存じ上げているよ。
 それに、君がファイアブランドの儀式を行った時、私も照明係をやっていたのだ。
グスタフ「そうだったのですか。
 その剣は?
ヴァン「これはギュスターヴ公が手ずから鍛え、抱えて寝たという、公が愛用された剣だ。
 私は長い事、この剣を愛でてくれる人物を探していた。
 君の父上、わが友フィリップに刺そうと思っていたが果たせず彼は亡くなった。
 今、君に渡そう、ギュスターヴ君。
グスタフ「ギュスターヴ公の剣……ありがとうございます、ヴァンアーブル師。
 天下分け目の料理勝負に、これ以上ふさわしい包丁はありません。
 では。
ロベルト「…行っちまったよ。
 おい、プルミエール、どうした?まさか、お前さんも行く、なんて言うんじゃ……?
プルミエール「これは彼らの戦い。
 私は……家の伝統や誇りの為に生きることを止めたの。だから行かない。
 でも、どうして耳が熱いの!


ヌヴィエム「待ちなさい!プルミエール、どこへ行くつもりですか?
プルミエール「病気のおばあさんにパンと葡萄酒を届けに。
ヌヴィエム「赤ずきんにならないの。あなたまで、あの腑抜けた兄弟達と同じような振る舞いをするつもり?
 これからのオート候家を支えていくのは、あなたなのよ。あなたはカンタールの娘なのよ。責任取りなさい。
プルミエール「お義母さま、私も父上を尊敬しています。それにお義母さまにも感謝しています。
 最後に産まれた私は父上に忘れられていたそうですね。半年も、ご飯ももらえず放っておかれたと。
 その私を父上に引き合わせて下さり、そしてご自分の養女として育てて下さった。
 プルミエールという名を付けて下さったのも本当はその日の気分だと知っています。
 お義母さまは、そんなこと一言もおっしゃらなかった。きっと父上をかばっていたのですね。
 それでも、私はお義母さまのようには生きられません。
ヌヴィエム「体の重さを知った時、人は誰でも弱気になるものです。
 大丈夫よ、それを減量すればいいだけ。それがメタボリック症候群からの脱却と言うことよ。
プルミエール「違うの、そうじゃない……
 お義母さまのなさった事で何が変わりました?メタボ憎しで世界マラソンのごとく駆け回って何が残りました?
 争いだけです。
 お義母さまの誇りが戦争を起こし、多くのアニマが消えたのです。
 ごめんなさい。 私、ひどい事を言いました。
 私にお義母さまの人生とダイエット法を否定する権利など無いのに。
 さようなら。 二度と戻りません。
ヌヴィエム「プルミエール!


ロベルト「グスタフの奴、遅いな。
 やっぱり殺してでも止めるべきだったんだ。くそっ!
ミーティア「大丈夫ですよ。あのくるくる髪と素肌にベルトのどっきりファッション。
 世界最強の見た目を二つも持っているんですよ。ねえ、ヴァン先生。
ヴァン「うむ……
ウィル「どんな勇者も可愛い娘の上目遣いには耐えられんものだよ。
ジニー「そんな〜、おじいちゃん、グスタフナンパされてるの?

ロベルト「グスタフ!!この野郎、さんざん心配かけやがって。お母さんはそんな子に育てた覚えは無いぞ!
グスタフ「すまん。戦場で四葉のクローバーが無いか探していたんだ。
ウィル「無かった……か?
グスタフ「はい。彼の直属の部下、エーデルリッター達も、金目のものも消えていました。
ロベルト「はっ!髪巻いて逃げたのさ。偉い奴ってのは、ファッションセンスだけは勇気があるもんだ。
 普通の格好してんのは下っ端だけさ。
ヴァン「何とか探し出さねば。また、鳥の手羽先を揚げるやもしれん。
ウィル「それは大丈夫でしょう。エッグは同じ事を2度はやって来ない。
 次は、美少女コンテストでも開くでしょう。とにかく私はエッグを追います。
ヴァン「頼みます、タイクーン。 あなただけが頼りです。


おわり。


書き始めてからずいぶんと経ってしまいました。
おかげさまでロマミンがずいぶん進んでしまっていました。
このイベントは感動的なセリフが多いもので、
こんなふざけたモノにしてよいのかしらという悩みがあったりなかったりしたのです。
最初に浮かんでいたセリフはロベルトの「殺してでも止めるべきだったんだ」でした。
それから次に「どんな勇者も〜」のセリフでした。このウィルのセリフにはもう少し色々なパターンを作っていた気がします。
「どんな勇者もバーゲンセールの誘惑には〜」とか。後は忘れました、時間が経ちすぎました。

やっぱり一番苦労したのはプルミエールの回想シーンですな。
あとはギュスターヴの剣に関するやりとりです。
じゅ、重要なものはひねりを効かせすぎると意味が通らなくなるんじゃないかと心配で…!
つまりその、「父の急逝」「上陸」は影が薄いからなんとでもできたわけで(爆)